コラム 【ウクライナ・ロシアいよいよ崖っぷち】

ウクライナ・ロシアいよいよ崖っぷち

12月5日、6日、ロシア国内の空軍基地がドローンによって攻撃されたという報道があった。
プーチンは当初よりロシア国内における攻撃が行われた場合、核兵器の使用を含め反撃することを示唆しておりその対応が注目されています。
10月以降、国際外交においてウクライナ・ロシアを取り巻く国際社会は非常に多くの変化が生まれています。
それまで米国、EUをはじめとする自由主義社会は、表面上一致団結してロシアを非難し、ウクライナに対する武器供与を含めロシアに対峙してきています。
またロシアはイラン、ベラルーシ、北朝鮮、中国等、温度差はあるが協力体制を築いているように見えていました。

この戦争の変化の兆しが見え始めたのは8月ごろです。
戦闘が長期化し、自由主義国側の援助、特に米国の備蓄兵器が減少し本来、保持しておくべき兵器の量が足りなくなっていると軍関係者が発表を行ったり、英国のシンクタンクが戦況分析においてロシアの精密誘導兵器の残余数が減少し枯渇するのではないかと云われるようになったころからでした。
その時期、外交の場面でプーチンは停戦協議を示唆するような発言を幾度かし始めます。
しかしその時点においてプーチンの交渉条件はウクライナ、自由主義国側にとって到底飲めるものでなく無視に近い状態でした。
10月に入ると、ポーランドやEU諸国で西側が供与する武器の運用訓練を受けたウクライナ軍兵士が武器とともに戦線に加わるようになると、ウクライナの反攻が始まりロシアが少しずつ後退する報道が流れます。
ドニエプル川西岸からロシアが撤退するころになると、米国・EUは核兵器の使用が行われた場合、ロシアにとって非常に深刻な状況に追い込まれることを、ロシアにしきりに繰り返し警告するようになります。
これは間違いなく米国もEUも核使用の可能性が上っていることを分析していることの証左です。
同時にウクライナに対しても停戦協議に入ることをゼレンスキーに提案したことが報道されています。
しかしゼレンスキーが停戦協議に入る前提として出した条件はクリミア半島を含む国土の確保であったため協議に入れる状態ではありません。

停戦協議の双方の前提は、ロシア側はクリミア半島を含めロシアが独立承認を行ったドネツクをはじめとしてドニエプル川東岸まで占領した地域のウクライナからの独立あるいはロシアへの割譲が停戦条件であり、ウクライナ側はクリミア半島を含む2014年クリミア半島侵略以前の国土確保です。
さらにNATO加入、ウクライナの復興費用として1兆ドルの復興費用の要求をしています。
双方の条件の乖離は大きく仲裁に入ることを考えている米国、EU、トルコなどもこの調整は困難でしょう。
ロシアは国内の経済で追い詰められ、徴兵に関してもままならず、経済制裁で武器の製造も遅延し、西側の分析では兵器のストックも不足している状態でかなり追い詰められている状況です。
とはいえプーチンは引く気はないでしょう。
引けば国内でのプーチンの立場は失墜し強いロシアは崩壊します。

一方、ゼレンスキーも追い詰められていると云えます。
ロシア侵攻の当初、ゼレンスキーは非常にうまく立ち回り国際社会を味方につけました。
侵攻された被害国として立場を強調し強かに国際協調を引き出し、武器・資金の援助を引き出しました。
しかし紛争が長引くにつれ、EUの中にはエネルギーに対する不安、あまり日本では報道されませんがエネルギーコストの上昇によるインフレによって政権を揺るがされるほどのデモ、金利上昇による景気後退がおきており、早々とドイツのショルツは経済団を引き連れ中国訪問し経済協力を取り付けています。


ウクライナ支援のために払う経済的犠牲があまりに大きいため、EUは支援疲れを起こしています。
しかしゼレンスキーは強硬な要求を取り下げず、当事者であるロシア、ウクライナはもちろん周辺国も落としどころが見えなくなっています。
支援を打ち切られると同時にウクライナは崩壊するでしょう。
当然、ゼレンスキーはそれがわかっていますので敢えてロシア本土への攻撃に踏み切り、プーチンがレッドラインとした本土攻撃を行うことで国際社会をのっぴきならないところに引きずり込んだとみていいと思います。
おそらくプーチンの発言からも核使用のハードルは下がってきており、本土攻撃に対する報復をいかに行うかが注目されています。

日本では忘れがちですが、ロシアはヨーロッパの遠い国ではなくウクライナの反対側の隣りあわせは日本であることを忘れてはなりませんし、昨年の8月にはロシアにおいて日本侵攻が検討されていたとの報道もありますのでもう少し政府にはしっかりしてほしいものです。

 

令和4年12月10日執筆

コメントを残すにはログインしてください。