少し雲行きが変わってきた?

【ちょっと経済の話】少し雲行きが変わってきた?

【11月9日午後】

このひと月間の間、円安が150円を超え146円まで急激に変動することで為替が話題になることが多い。
米国FRBの急激な利上げ、それに追随する形でEUや各国の中央銀行が金利の引き上げを行っている。
最大の要因は各国のインフレ傾向に対し各国の通貨当局がインフレ抑制を目的とした金利引き上げを行い、通貨供給量を抑制し物価(CPI)の過熱を抑えることを試みているからである。
そもそもこのインフレ傾向の端緒は、ロシアのウクライナ侵攻にあり、戦争によってエネルギー供給国であるロシアの原油、ガス供給の低下、さらにウクライナの農産物の供給低下などが国際市場においてそれらの物資の供給不安、あるいは不足からエネルギー関連物資、小麦等の農産物の高騰が世界中の国々のインフレを引き起こしている。
その価格高騰を抑えようとして各国の中央銀行は金利の引き上げによって通貨供給量を抑制してインフレを抑えることを試みている。
通常、インフレは景況感の過熱によって引き起こされるものであるが残念ながら今回のインフレは輸入品目のコスト高によって引き起こされており景気が特によくなったわけでもないのに物価だけが上っていくというスタグフレーションの形になっている。
庶民を苦しめるいわば悪いインフレである。

各国はここ数年のコロナ禍により経済的に大きなダメージを被っており、そのダメージに対応するため史上最低の金利政策をとっており、今年から経済的に立ち直ろうとしていた矢先にウクライナ侵攻によって出鼻をくじかれた形になった。
特に欧州各国は化石燃料からSDG‘sなどを掲げ太陽エネルギー等への変換を図ろうとし、天然ガスへの依存度を引き上げているところにロシアの天然ガス供給を絶たれたことで新たな供給先を探すことになりエネルギー産品の価格高騰を招きSDG‘sの基本的政策そのものを見直さざるを得なくなってもいる。

幸い日本は、再生エネルギーに関してもたもたしていたおかげで各国に比べるとダメージが少ないようである。
そういったことから各国と日本の金利差が開くことで日本の円の価値が下がり円安傾向になっている。
よく円安で「景気が悪くなるから大変だ。」などという人もいるが実のところあまり関係がない。
実際に日経平均の最高値を記録した1989年の為替レートは137円であった1989年は日本がジャパン アズ ナンバー1などと云って浮かれていたその年である。
新聞屋の書く記事はその程度と思っておけばいい。
また景気が悪くなるとか云っていても今年の国の税収は63兆円で税収の最高記録である。
これもまた財務省は大きな声では云わない、防衛費の増額や補正予算を盾にして増税を目論んでいるからである。
近いうちにコロナ復興税とか、恒久財源としての消費税引き上げが出てくることになるだろう。
いつも泣くのは庶民である。
話を戻すと各国と日本の金利差が今の円安を招いているわけだが日本の黒田日銀は各国の利上げとは、関係なく低金利政策を取り続けていることから当面、円安の基調は変わらないが先日、書いたように170円までの円安は可能性が低くなってきたようである。
その根拠はまず米国、FOMC議長のパウエル氏の発言、そしてECB議長の発言である。
発言の主旨は現在のペースで金利の引上げを行い続けることは米国、ヨーロッパの経済がリセッション(景気後退)を招く可能性があることからそろそろ利上げペースを縮小することを検討している、との発言である。
これを受けて米国株価が上昇した。
物価抑制のためには利上げで通貨供給量を抑制したいが、利上げしすぎると今度は景気後退を招いてしまうというジレンマに通貨当局が陥っていることを示している。
日本はCPI(コアコア)が1.7%であり日銀の目標値2%に達していないことから低金利政策は維持されると思うが、年末ごろにはCPIがそろそろ2%に達することも予想され来年には金利引上げが具体的になってくるであろう。
そのようなことからおそらくドル円は150円(上下5円程度)前後で推移していくことになろう。

令和4年11月10日執筆

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