コラム 【いよいよきな臭くなる台湾問題】

いよいよきな臭くなる台湾問題

10月16日より北京において中国共産党第20回全国代表大会が開催された。
22日には新しい党中央の人事が発表され主席、党の最高幹部チャイナ7の人事も発表された。
中でも注目されていたのが習近平と李克強の去就、最高幹部の人事である。
今後の中国の政府方針を表すことから世界が注目していたわけであるが、残念ながら日本と台湾にとっては最悪の人事となった。おそらく世界にとっても一部の国を除くと非常に懸念を持たざるを得ない人事であったことは間違いない。一言でいうと14億人の人口を持つ権威主義の独裁国家が誕生したと云っていい。

中国は1970年代から共産主義ではあるが周恩来政権時代から閉鎖的な国家体制から国の門戸を開放し、鄧小平時代には開放路線として経済活動も盛んに行ってきた天安門事件など懸念を抱かせる事件はあったものの、基本的には国家体制は共産主義国家であるが資本主義的な経済を同時に追求する実験国家として世界の国々と関わってきた。

それから50年経て途上国から経済大国にまで成長した中国は基本的な共産主義思想と資本主義の内包する矛盾に耐え切れないところまで来てしまった。
このことから習近平と云う国家元首の登場により共産主義という思想をとるか、開放路線の延長線上にある資本主義をとるかの選択に、習近平は共産主義を選択したと云っていい。
現時点における中国に対する世界の評価は戦狼外交、債務の罠など国際慣習を無視した行動によってすこぶる悪いものになっている。

南シナ海におけるフィリピン、ベトナムなどの南沙諸島の不法占拠、軍事基地化。
また、経済的な国家破綻を起こしてしまったスリランカは、港湾施設を借款の担保に取られ事実上の占領状態になった。
それに続く国がラオスなどのアジアの国家、アフリカ諸国など資源や社会インフラを借款の代物返済として取り上げるという「ナニワ金融道」スタイルで、今まで考えられていた途上国に対する支援策としての経済協力ではない経済による覇権主義の実現モデルを実行している。これらの国際的には横暴とも云える中国型覇権主義が国際的な批判を浴びており、同時にウクライナに侵攻したロシアに対する世界各国のロシアに対する猛烈な批判を眼にして、習近平は次に眼が向くのは中共であろうことを想像しているであろう。
人事から話がそれたが、今回の党大会で西側諸国は李国強、胡春華など中国共産主義青年団(共青団)がどの程度、権力を握りバランスを取るかを注目していた。
基本的に共青団は、開放路線であり今後の中国の極端な毛沢東路線への回帰に対し抵抗勢力になることが期待されていた。
共青団からは最低1名は最高指導部に残るとみられていたが年齢が高いことを理由に全員が外された。

また党大会において長老とされる胡錦涛(元共青団第一書記)が大会中に強制退去させられるに及んで、習近平が完全に共産党指導部を握ったことを衆目の前で見せつけた。
これで、もはや李克強のように習近平に対し対抗あるいはブレーキとなる人間が指導部にいなくなり、習近平はブレーキのない暴走をする可能性がより高くなった。
中国国内経済において不動産バブル崩壊に直面している状態で、ロックダウンによるゼロコロナ政策など国内の問題の解決ができず、国民の目をそらすために中国の核心的利益である台湾侵攻を選択する日は遠くない将来であろう。
歴史を振り返っても、世界的な不況が大きな戦争を招くのは経験則からも言えることで、世界的なエネルギー問題、米国のリセッション、ヨーロッパにおける政府の政策に反対するデモなど大戦前夜の雰囲気が漂っている。

今、日本が置かれている状況を考えるときにいかに生き残るのかを真剣に考える時期が来ているのではないだろうか。

 

令和4年10月24日執筆

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